BASF AgroにおけるS & OP、価格予測、および顧客収益性管理
情報へのアクセスを増やし、業績を向上させる
非常に複雑な農薬市場で事業を行っているBASFは、情報へのアクセスを増やし、計画と管理のプロセスを変革するための管理インテリジェンスプロジェクトに着手しました。Board意思決定プラットフォームを使用して、同社はマネージャーに、進化するビジネスプロセスに適応し、計画と予測のデータをソースシステムに簡単に書き戻すことができるソリューションのパフォーマンスへの理解を深めました。
- Industry: Chemicals
- 部門: Finance, Marketing, Sales, Supply chain
- 従業員数:122,000名
- 売上規模:630億ユーロ
- グローバル拠点:90カ国以上
1865年創業のBASFは、世界をリードする化学品会社の1つです。グループの使命は、経済的成功を、環境保護や社会的責任と同時に果たすことで、化学の可能性を活かして持続可能な未来を築くことにあります。同グループは業界のほぼすべてのセクターと実質的に世界のすべての国で、基礎化学品から塗料・顔料、栄養成分、パーソナルケア用品向け原材料、作物保護製品まで多岐にわたるポートフォリオを展開しています。BASFは、フランクフルト証券取引所(BAS)に上場しており、米国では米国預託証券(BASFY)として取引されています。
BASFグループ概要
・世界約90か国で事業を展開
・11万8,000人を超える従業員
・11の事業本部、6つの事業セグメントで構成:
- ケミカル
- マテリアル
- インダストリアル・ソリューション
- サーフェステクノロジー
- ニュートリション&ケア
- アグロソリューション
・54のビジネスユニット(グローバルおよび地域ごと)
・76の戦略的製品領域
・売上高 約590億ユーロ
農薬を専門とするBASFアグロソリューション事業部は、農家が土地をくまなく活用できるようにするための革新的なソリューションを提供し農家を支援しています。これらの目標を達成すべく、国際レベルで研究開発に多額の投資(2001年の時点で早くも総額120億ユーロ超)を行うことで、イタリア市場の特定のニーズに対応して、現在と将来の経済的ニーズのバランスを取りながら、生産者のニーズと消費者の期待のバランスも取ってきました。
BASFアグロソリューション事業部のコントローラマネージャであるMichela Gazzola氏は、以下のように指摘します。
当グループの化学品は無数の日用品に使われていますが、あまり認識されていません。その範囲は車の塗装から、家庭および個人向けの衛生用品、園芸用品、包装材など多岐にわたります。農薬部門では、『作物の薬』ともいえるものを生産しており、まさに人間の薬と同じように認可とコントロールが求められます。
Boardプロジェクト
Boardが通常利用される企業領域:
- 販売
- サプライチェーン
- コントロール
- 顧客サービス
- マーケティング
- 地域別管理
- 国別管理
アプリケーションソリューション:
セールス&オペレーションズプランニング(S&OP):
- 販売予算編成
- テリトリ別予測
- 販売目標の設定
- 注文管理
- 注文・配送追跡
- リスクと機会
- 販売インセンティブの業績
欧州価格の管理
- 完全な商業契約と価格の管理
- 割引率の管理
- 販売ポリシーの管理
顧客ごとの計画と収益性
- 顧客ごとの収益性の計算と監視
- コストの予測
- 損益
マネジメントインテリジェンスシステム
- 販売に関連するKPIの監視
- 販売の粗利益の監視
- ロジスティクスと顧客への配送に関連するKPIの監視
- 旅費の監視
- 財務レポートの作成(収益とクレジット)
- 供給に関連するKPIの監視
適切なツールで計画と予測の複雑さをコントロール
BASFアグロソリューション事業部が事業を展開する農薬市場は、非常に複雑かつ急速な進化を遂げているセグメントです。そのため、ますます多様化するニーズに適切なタイミングで対応するには、事業部の構造改革が絶えず行われる必要があります。BASFアグロソリューション事業部はイタリア全土に広がる販売構造を通じて事業を展開し、1,000件ほどの請求先ポートフォリオを抱えています。配送先ごとに最終的な数字の計画、予測、処理が行われますが、ご想像のとおり、その数は請求先よりも多くなります。
1件の請求先顧客に複数の配送先が存在し、それぞれが離れた地域にある場合は、異なる販売担当幹部の管理下に置かれることが考えられます。そうなると、1件の請求先が運用上複数の販売担当幹部(場合によっては複数の販売エリア)によって共有されることもあり得るわけです。この構造の複雑さは、販売データがチャネルごとあるいは販売タイプごとに各品目の特徴に基づいて再分類されたうえ、取り扱う作物と対応付けられるという事実によりさらに増します。
つまり定量的にも定性的にも、この状況の管理は非常に複雑で、大量のプロファイルが関わるため、アグロソリューション事業部を効果的に運営するには、情報(担当幹部、販売アカウント担当マネージャ、エリア担当マネージャ、農作物担当マネージャ、サプライチェーン、コントロール、部門)へのアクセスが必要になるということです。
BIおよび業績管理市場で、計画、予測、分析、レポート作成プロセスにガイドとガバナンスをもたらす最適なソリューションを見つけるお手伝いをするために、私たちはまず、一連の複雑性指標を特定することから始めました。これら指標を基準として、業務をよりシンプルかつ俊敏に遂行するのに役立ちそうなそうなソフトウェアツールを評価するのです
と、Michela氏は振り返ります。
これらの複雑性指標(定量的・定性的の両面)は以下のとおりです。
- 品目の数
- 顧客の数
- レポートの数
- 内部のマクロプロセス
- コンプライアンス要件
これらの複雑性指標を踏まえ、BASFアグロソリューション事業部が求めていたパッケージは幅広い要件を満たす必要がありました。ITアーキテクチャやユーザインターフェイスの観点から、シンプルかつ柔軟であること、人々の自律的な作業を可能にするものであることが要件でした。そのため、組織全体で使用しやすく、目標レベルに対するKPIを日常的に監視できるレポートを作成する必要がありました。
また計画立案という点では、同事業部が求めていたソリューションは、ERP(SAP)やCRMなどのすべてのビジネス管理ツールと統合可能な予算編成・予測プロセスを、内部のコンプライアンス基準に従って導入できるものである必要がありました。そして最後に、選択したプラットフォームは販売スタッフの「顧客中心」アプローチを重視し促進するものでなければならなかったと、Michela Gazzola氏は以下のように説明します。
私たちは、ビジネスプロセスをできる限り合理化してくれるソフトウェアプラットフォームを探していました。それにより、販売スタッフがPCの前に座って分析を行うために費やす時間を極力短くすることで、お客様に対応して、そのニーズに耳を傾け、自社製品を紹介するための時間をできるだけ多くとれるようにしたいと考えていたためです
BIおよび業績管理ソリューションをいくつか評価した結果、BASFは、Boardがアグロソリューション事業部の複雑なワークフローや構造の管理に最適なソフトウェアであると判断しました。特にBASFが評価した点は、その強力なライトバック(書き戻し)機能、プラットフォームの柔軟性とデータベースやデータガバナンスの堅実性の融合、高度なセキュリティ、さらにアーキテクチャの安定性と堅牢性でした。
また別の重要な考慮点は、「オフサイト」のスタッフ全員が会社のVPN(仮想プライベートネットワーク)からのリモート接続により、素早く直接的にデータベースのデータを調べたり、入力したりできる点です。さらに、データベースの「データリーダー」の高度な機能により、Boardがさまざまなソースからデータや情報を効果的に統合して、会社のERPシステムであるSAPとともに戦略的役割を果たすことができる点も挙げられました。
しかし、BASFはまた、Boardの主要な意思決定機能全般のほか、特に分析、予算編成、予測にも非常に感銘を受けたといいます。
私はこれまでのキャリアでBoardの競合他社が提供するツールをたびたび使用してきました。そして、Boardの使用を約20年にわたって段階的に拡大してきて、今では当然のようにその機能を使用しているのですが、こんな機能は、Boardの競合他社が開発した他のソフトウェアには見当たらないし、複製することも一筋縄ではいかないだろうな、とひしひしと感じています。このようなビジネス効果やメリット、例えば分析、予算編成、予測などの機能を他の計画立案ソフトウェアやBIソフトウェアで得ようとすれば、はるかに面倒で困難な作業となるでしょう。
と、Michela Gazzola氏は力説します。
Michela Gazzola氏が最も有益と考える高性能な機能には、ドリルダウンやドリルスルーによる時間分析の実行機能や、自社の情報資産(セルフサービスモードの場合を含む)での履歴データに基づくレポート作成機能などがあります。それ以外にも、Boardは何十人もの販売担当者がデータを同時に入力できる機能も備えています。
ピーク時には、イタリア国内だけでも50人以上の販売担当者が複雑なデータを入力し、リアルタイムアプリケーションで運用しなければならない場合があります。さらに、各ユーザは所定のセキュリティおよび機密保持ポリシーに従って、役割ごとのプロファイリングを基に特定のセルがロックされた状態で、会社の情報にアクセスできます。また、Boardソリューションによって、承認ワークフロー全体を管理できるようになりました。
と、Michela氏は付け加えます。
イタリア国内での基本的なレポート作成から、欧州全土での高度な価格管理へ
BASFアグロソリューション事業部では、Board意思決定プラットフォームを全従業員と外部の人々、特に販売担当者や、管理職、顧客サービス、サプライチェーン、コントローラといったソリューションやアプリケーションの管理者でもある人々が使用しています。
Boardをかれこれ20年ほど利用するなかで、私たちはアプリケーションとユーザプロファイルを着実に拡大してきました。そして、ある時点までくると、このプラットフォームでのアプリケーション開発を完全に独力で行えるようになっていたのです。ただし、必要なときにいつでもベンダーのサポートに頼れることはわかっていました
と、Michela氏は説明します。
当初BASFは、Boardをレポート作成時のベースとして、つまり、収益の創出やクレジットに関する活動を示す手段として使用していましたが、次にそれを注文管理へと拡張させました。その後Boardは、BASFチームがBoardを使って実行する「中核」プロセスと考えているもの、すなわち販売の「予算、目標設定、予測」サイクルを開発するための最適な環境構築へと進みます。これらの計画立案・レポート作成ソリューションを補完するため、顧客に適用される割引率や販売ポリシーの管理に役立つアプリケーションを長年にわたり拡充してきたBASFは、今や商業契約や価格の管理に直接Boardを利用するようになっています。
販売キャンペーンに乗り出す前に、お客様ごとに製品の割引率を設定すると同時に、対応する販売ポリシーの承認プロセスをすべて終えます。それらの承認はエリア担当マネージャと販売担当ディレクタによって行われ、常にBoardプラットフォームが使用されます。販売計画の立案と予測プロセスのためにBoardを使って構築されたアプリケーションは、非常に有益かつ効果的であることが実証されたため、このモデルとプラットフォームの利用に関する我々のベストプラクティスを、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、イスラエルにある国外拠点にも取り入れることにしたのです。
と、Michela Gazzola氏は説明します。
さらに最近、BASFはBoardによって構築した販売計画の立案プロセスを「オペレーション」にまで広げて統合。プラットフォーム機能を使ってエンドツーエンドの計画立案を導入することで、「セールス&オペレーションズプランニングおよび予測」ソリューションへと進化させました。これには、戦略的要素や財務的要素のほか、サプライチェーンのより運用に近い要素が盛り込まれています。
S&OPプロセスを構築することにより、サプライチェーンに関する重要なデータや情報を計画立案・予測プロセスに組み込みました。また、新しい注文追跡ツールも開発しました。エリアとロジスティクス活動に関連するKPIの監視に基づくこのツールによって、お客様への製品配送期日に対するより細やかなコントロールが可能になりました。さらに、将来的にCRMに組み込むことを視野に、Board上でお客様ごとの収益性を計算するための機能も開発しました。当事業部の経営陣と親会社は、この新たなステップが飛躍的変化をもたらし、欧州を対象範囲とするプロジェクトの踏み台になると考えたのです
と、Michela氏は付け加えます。
実際にBASFは、Boardによって得られたポジティブな体験とメリットを根拠に、欧州のアグロソリューション事業部全体をカバーする価格管理ツールを開発し、導入することにしました。
予算編成-目標設定-予測: 進化するS&OP
BASFアグロソリューション事業部では予算の編成が1年に1回行われ、これが基本的に事業部が本社に対して収益、サプライチェーン、全体的な粗利益の観点から行ったコミットメントとなります。次にこのコミットメントは、組織全体を通じて横割り・縦割りで配分され、1年の進行とともにより堅固なものとなります。
各品目に対する一連の月の目標売上高へと変換されるまで、価格リストの計算、分析、確認を行い、お客様に割引を提供するためのすべてのルールを設定します。そうすることで、販売の粗利益を決定できるのです。
と、Michela氏は説明します。
計算された目標は、目標設定プロセスに落とし込まれます。これにより、各販売担当者、ひいてはお客様ごとの販売と業績の目標が段階的なプロセスと承認ワークフローを通じて設定されます。
Boardによって構築されたアプリケーション内で設定したルールに基づき、販売担当幹部が提案を作成します
と、Michela氏は続けます。
Boardと当事業部のCRMを統合することにより、お客様にどの提案やサービスを提供できるかを容易に決定できるようになりました。しかしそれだけではありません。お客様の収益性を計算して、当事業部のベンチマークに沿っているかどうかを評価することもできます。問題がなければ、顧客契約の草案づくりと管理に進みます。私たちはこのプロセス全体を『目標設定』と呼んでいますが、このプロセスには3~4か月ほどかかり、厳格な承認ワークフローによって規制されます。また、コンプライアンスルールや、アグロソリューション事業部の他のプロセスとの効果的な統合も考慮されます。
BASFが顧客の収益性や顧客契約の管理に使用するBoardアプリケーションは、次の段階である「予測」のベースとなります。毎月、BASFのアグロソリューション担当コントローラマネージャが率いるチームが、エリア担当マネージャと作物担当マネージャに設定済みの月次目標に関する予測の策定を依頼します。販売の動向と、各顧客に適用される販売ポリシーや割引率を考慮して価格予測が策定されるため、価格目標の範囲と、ひいては販売の粗利益の正確な監視が可能です。
Michela氏は次のように説明します。
私たちは、このプロセスを理想的なものにすることができました。販売計画の立案と予測を、セールス&オペレーションズプランニングおよび予測の完全なプロセスへと進化させたのです。このプロセスでは、サプライチェーン、エリア担当マネージャ、作物担当マネージャが、販売の可能性をロジスティクスと規制の要件とともに示します。
さらにBASFは、S&OPプロセスの一環として、目標に関して考え得る業績のバリエーションに基づくビジネスモデルの作成を可能にするため、Board上でアプリケーションを開発しました。
Boardプラットフォーム上で販売要素をサプライチェーンと統合することで、BASFアグロソリューション事業では、独自のリスクと機会の概念を具現化することができました。つまり、ポジティブな事象とネガティブな事象が発生する確率の分析です。これは、予測精度の向上に役立っています
と、Michela氏は説明します。
進化は続く: BASFがBoardで築く未来
同事業部がBoardから得た主なメリットを、ツール自体と、それによって確立されたビジネスプロセスの両面から考慮して、BASFは、意思決定プラットフォームの利用範囲を、新しいアプリケーションの開発や事業を展開する他国にそのベストプラクティスを取り入れることで、さらに拡大したいと考えています。実際にこの取り組みはすでに始まっています。
Boardの利点の1つは、ツールやアプリケーションの構築が設計と導入に終始しないところです。代わりに、そのまま自由に改善を続けることができるので、ビジネスニーズや市場のニーズの変化に合わせて柔軟に適応させることが可能です。そして、使いやすく、ビジネスユーザ向けに設計されたプラットフォームのおかげで、外部の支援を得なくとも、Board上でツールの改善を行うことができます。これまでBoardを利用して数々のアプリケーションを開発してきましたが、当社はサプライチェーンと管理コントロールを専門としているのであり、ITのエキスパートではありません。しかも、独自のアルゴリズム、アプリケーションの構造、スクリーンなどすべての構築と修正に、特定のプログラミング言語の知識に左右されることなく、内部で対処できたのです
と、Michela氏は話します。
実際のところ、BASFアグロソリューション事業部チームの念頭には、すでにいくつかの新しいBoardアプリケーションの構想があります。それにはさらに、製品の納期と、倉庫での製品の受け取り、販売目標を結び付けることで、プラットフォームとグループのCRMの統合や、顧客への配送を効率化するためのシミュレーションの導入が必要になります。