三菱電機ヨーロッパが取組む事業計画と分析の統合
売上分析時間を99%短縮し、可視性を高め、異なるプロセスから全社規模への管理に移行
手動のデータ統合とプログラミングを必要とする柔軟性のないレガシーレポートシステムに直面したMitsubishi Electricは、Boardインテリジェントプランニングプラットフォームを利用して、複数のシステムからのデータを単一で機能が豊富な環境に統合しました。売上報告システムから始めて、見積もりからアフターセールス追跡まで、エンドツーエンドの売上分析、予算編成、および予測プロセスをカバーするように拡張されました。
- Industry: Manufacturing
- 部門: Sales
- 英国内支店数: 7
- 運用部門数: 6
- 事業年数: 35年
1996年に設立されたMitsubishi Electric Ltdは、三菱電機ヨーロッパの英国支社であり、三菱電機を形成する主要22社のうち屈指の規模を誇ります。同社は英国に7つの支店を有し、6つの事業部門を展開しています。事業部門はそれぞれ、空調システムでも知られるLiving Environmental Systems(LES)、Factory Automation(FA)、Visual Information Systems(VIS)、Diamond Vision(DV)、Lift & Escalator Division(LED)、およびAutomotiveです。
課題: 多くのリソースを必要とするレガシーレポートプロセス
1998年以来SAPベースのERPシステムを使用し続けてきたMitsubishi Electricは、アップグレードを切実に必要としていました。使いやすいフロントエンドを追加して、ユーザがデータのアップロードや在庫管理、見積もりの作成や注文処理を実行できるようにしたものの、さまざまな面でニーズを満たしていなかったこのシステムでは、非効率な手動のプロセスが発生し、ユーザは不満がつのっていました。
既存システムには柔軟性がなく、手作業でのデータ一元化が必要で、レポートに変更を加えるには手作業でのプログラミングが不可欠でした。つまり、同社における変化のスピードを考えれば、レポートごとにサードパーティの開発リソースを何時間も(あるいは何週間も)消費する、継続的な高コストの開発プログラムを維持し続けるということです。何百ものレポートを作成するMitsubishi Electricは、スプレッドシートでERPデータを操作して必要な形式に変えようと試みましたが、精度とバージョン管理の問題が生じ、新たなビジネスニーズへの即応性が低下しました。
一方、経理部でも数々の問題を抱えていました。例えば、完了までに2週間かかることもある手動での調整プロセスや、サードパーティツールに入力されるまでに部門間で何度もスプレッドシートがやりとりされる、複雑な予算編成プロセスなどです。
継続的に社内業務を進化させ、全社規模でテクノロジやサービスを向上させることを目指す活動の一環として、Mitsubishi Electricは、複数のレガシーシステムからのデータを統一された機能豊富な環境に統合することのできる、単一のプラットフォームに投資することを決定しました。
その狙いは、ユーザに正確な多次元トランザクションデータへのリアルタイムアクセスを提供すること、ダッシュボードやKPI分析などの分析機能を通じて迅速かつ自己完結型のレポート作成を可能にすること、そして予算編成や予測を行えるようにすることでした。
IT部門の月末の生産性を圧迫していた負荷を軽減するため、新しいシステムは、新しい要件やデータに対応できる必要があるとともに、同社を中心とするユーザが独自のレポートや、ABAPクエリ、分析を生成できる機能を備えている必要もありました。
ソリューション: BIとEPMのシームレスな統合
SAP、Cognos、Crystal Reportsなど、社内外のソリューションをいくつか検討した結果、Mitsubishi Electricが選択したのは、Boardの意思決定プラットフォームでした。ビジネスインテリジェンス(BI)と企業業績管理(EPM)のシームレスな統合機能に加え、スピード、シンプルさ、柔軟性が評価されたためです。
Boardは、実際に当社のデータを使って数日以内にPoCを実現できました。と、Mitsubishi Electricのビジネスサポートグループ担当マネージャであるJohn Quickenden氏は述べています。
Boardのプラットフォームは、ビジネスインテリジェンス、計画、予測分析を単一の統合環境に一体化することで、Mitsubishi Electricが注文管理、会計、レポート作成プロセス全体で必要とする幅広いサービスをすべて提供するとともに、同社への情報の提供を数日から数分、さらには数秒にまで短縮します。
Boardの統合ソリューションを選択するということは、追加モジュールを購入する必要がないことを意味しました。Boardなら、当社が必要とするものを単一の環境内で提供してくれるためです。つまり、当社はBIとCPMのニーズに対処するために将来にわたって使用可能なプラットフォームを手に入れたといえます
と、Quickenden氏は話します。
Mitsubishi Electricは、BoardのビジネスパートナーであるSDG Consultingと連携することで、ソリューションが幅広い要件を満たすようにするうえで必要な実装スキルと業界の知識を得ました。三菱電機ヨーロッパのIT運用&サービス担当ゼネラルマネージャであるIain Blazey氏は、実装プロセスについて次のように説明します。
私たちは段階的なアプローチを取りました。まず、SAPから実績レポートを提供する売上報告システムから始めて、見積もりシステム、ロジスティクスシステムへと進み、最後に、見積もりの作成方法からアフターセールスの追跡に至るまでの詳細を提供する完全なエンドツーエンドの統合プロジェクトを実施しました。
これらのソリューションには、ユーザがBoardに直接各自の予測をライトバック(書き戻し)できる予算編成機能や予測機能が搭載されているほか、複数のパラメータにわたる極めて重要な情報を提供して、経営陣がIT部門の手を煩わせることなく必要に応じて数字を分析できるようにすることを目的とした、エグゼクティブダッシュボードも搭載されています。また、情報をさまざまなカテゴリでフィルタリングできる機能を備えているため、ユーザがきめ細かなレベルで必要な情報を抽出できます。
Boardプラットフォームを採用したことで、Mitsubishi Electricは販売及び注文分析を合理化できるようになりました。これにより、プロジェクトごとにどれだけの見積もりが発行されたか、案件獲得/失注の平均比率、向こう6か月の販売予測の精度、顧客の購入行動、販売サイクル、平均割引率について、ユーザが理解を深めることが可能になりました。
同社ではほかにも、Boardを利用して材料に関する体積や重量の情報を記録できるようになりました。そのためユーザは、在庫の値などの情報を数量、体積、価値、重量単位で確認することも、現在使用されている倉庫スペースの全体積を確認することもできます。Boardなら、エンドユーザがこの値をさまざまな方法でフィルタリングしたりカスタイマイズしたりできるので、他部門の負担が軽減します。
このツールキットについて知れば知るほど、まだまだ学ぶことがあるなと実感します。Boardの導入を開始したとき、仕様書はそれなりのサイズでした。Boardを実装して人々がその機能を知るにつれ、仕様はどんどん拡大していきました」と、Quickenden氏は説明します。
メリット: プロセスの合理化、精度の向上、柔軟性の拡大
アイルランド、スペイン、フランス、ドイツにあるMitsubishi Electricのオフィスすべてで、Boardを採用して以下のようなメリットを得ています。
- 計画精度の向上: 営業チームは、メールで自動送信されるレポートを介してSFDCに送られる日々のフィードバックが含まれた精度の高い営業パイプラインのレポート作成機能により、見積もりから製品・サービスの提供、さらにはその先まで、営業プロセス全体の可視性を得ました。この情報により、営業チームはトレンドを特定して市場のニーズにいち早く対応が可能。
- 即時の販売分析: かつて10時間かかるプロセスだった販売&注文分析が、わずか2秒に短縮
- 自律性の向上: 事業部では、独自のレポートの作成や変更、欧州にある全支店からのデータの集約を実行できるようになりました。
- レポート作成プロセスの合理化: 標準レポートを作成して、事業部門レベルの全責任者に行き渡るようにする作業に数週間かかっていたのが、わずか25分で済むようになりました。各責任者は必要に応じて柔軟に情報をフィルタリングすることもできます。
- 信用管理の向上: 請求が完全にデジタル化され、1時間以内に照合されるようになりました。数字に不整合があればさらなる分析を促すためにフラグが付けられます。
- 柔軟性の拡大: ユーザが集約レベルではなく詳細レベルで予測を作成できるようになったことで、柔軟性が増し分析が向上しました。
- 営業実績の迅速な把握: Boardにより、3週間ほどで営業実績を把握できるようになったため、ある事業部では統制と収益性の維持が可能になり、欧州での売上を速やかに10億ユーロ超にまで成長させました。
これは、社内での私の知名度を高めたプロジェクトの1つです。ビジネスニーズに基づく技術的ソリューションの実装に対してだけでなく、ビジネスの統制を回復させたことや、セルフサービスとビジネスの前進を促進する能力を提供したことが認められたのです
と、Blazey氏は付け加えます。
今後の展望: 予算編成機能と予測機能をプラットフォームに統合
Boardは元々、英国ビジネスを想定したツールでしたが、その効果の大きさが実証されたことで、Mitsubishi Electricでは現在、タイムリーな情報を本社に提供するための手段としてこのツールの利用を他の地域にまで拡張しようとしています。その目的は、Boardを利用して支店ごとに異なる予算編成ツールや予測ツールを共通のソリューションに置き換えることです。Quickenden氏は次のように結論付けます。
Boardを利用する人が増えるほど、誰もがBoardをより有効に活用したいと考えるようになります。そしてBoardは実際に、このようなビジネス全体の改革をサポートする柔軟性、能力、スピードを提供してくれました。